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2019年12月のリサイタルの際に来場者に配布したパンフレットに掲載した文章です。

リサイタルで引退となった三人のサークル員が「ニューオルリンズジャズについて」をテーマに書きました。

1 ニューオリンズ・リバイバル期のミュージシャンたち / 浅野美来

2 渡米記 / 沼田遼太郎

 ニューオルリンズブラスバンド今昔 / 林田翔馬

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​ニューオルリンズブラスバンド今昔

​林田 翔馬(教育学部4年)

 今日ではニューオリンズは19世期末から20世期初頭にジャズが生まれた地として知られていますが、ブラスバンドスタイルでの演奏はそれ以前から存在していました。その歴史は古く、日本の幕末頃まで遡ります。1861年から1865年にかけて行われたアメリカ南北戦争で敗戦した南軍の所有楽器が安く売りに出され、当時は立場の弱かった黒人でも安く購入することができるようになります。そしてこれらを使って街をパレードするブラスバンドがニューオリンズでも結成されるようになりました。

 編成は管楽器を中心に、パレードを前提としているためピアノやベース、ドラムセットといった大型の楽器は使用せず組まれました。打楽器はスネアドラムとベースドラムに分かれたセパレートと呼ばれるスタイルで、何より特徴的なのはスーザフォンと呼ばれる持ち歩きを想定した楽器が低音を担当していることです。

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 当時演奏されていたレパートリーはジャズではなく民謡、賛美歌などが主でした。ラグタイムやジャズのアレンジで賛美歌やスピリチュアルソングを演奏することは、ニューオリンズスタイルで現在もお馴染みになっています。華やかなブラスバンドはやがて、お祭りや結婚式を始めさまざまな場所で演奏するようになります。なかでもよく語られる特徴として葬列に加わっての演奏が挙げられます。

 葬儀を終え、墓地までの道は「ファーストライン」と呼ばれ、道中では厳然とした賛美歌(ダージ)を演奏しますが、墓地を出発して街へ戻る道のりでは故人の魂が解放された(苦しい奴隷生活を終え、天国へ行った)ことを祝う華やかなパレードナンバーを演奏します。『お前がいなくなっても寂しくないぜ』という意味合いもあるようですね。この帰路のことをファーストラインに対して「セカンドライン」と呼称します。この言葉はニューオリンズ特有のリズム(スワンプビートとも)も意味するなど様々な使われ方をしています。

​ニューオルリンズで出逢った結婚式の隊列

​多くの人で賑わうセカンドラインの様子

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 その後もニューオリンズブラスバンドの文化は継承されていきますが、いわゆるニューオリンズリバイバル期になると、ブラスバンドを伝統芸能としてだけではなくエンターテインメントとして捉え、演奏をブラッシュアップするような動きが生まれます。ボーカルや各楽器のソロなどをフィーチャーし、パレードをするためのバンドから、ブラスバンド自体を観賞するコンサートを作り上げるまでになります。

 その後、1970年代から演奏者や聴衆の高齢化などが原因でブラスバンド文化は一度廃れかけてしまいます。しかしルイアームストロングとも共演した伝説的バンジョー/ギター奏者ダニーバーカーをはじめとする人々の尽力によって、新たな世代のブラスバンドが生まれます。

 彼らはジャズやそれまでのニューオリンズスタイルミュージックに囚われずR&Bやファンクのスタイルを取り入れ、その音楽はやがて「セカンドラインファンク」と呼ばれるようになります。セカンドラインファンクの元祖とされるDIRTY DOZEN BRASS BANDやその後継バンドでもあるREBIRTH BRASS BANDは、日本でもニューオリンズジャズとしてではなく洋楽ファンクの一種として輸入され、現在でも数年に一度来日して大型のフェスへ出演し日本のリスナーからも幅広く受け入れられています。

 その後もブラスバンドスタイルミュージックは様々な音楽と結びつき、HIPHOPやロックやレゲエ、エレクトロニカ、果ては沖縄音楽までをも、独自の音楽を形成する要素として取り込んでいます。その新規性や音楽性は高く評価されており、当部OBの菊池ハルカ氏も参加しているCha Waは世界で最も権威のある音楽賞、グラミー賞にルーツミュージック部門で今年ノミネートされました。来年受賞者が発表される第62回にはREBIRTH BRASS BANDもノミネートされています。

 これからもニューオリンズスタイルブラスバンドは変化を続けていくことでしょう。

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 我々ニューオルリンズジャズクラブでもブラスバンドの研究をするバンドが毎年結成され、外部の演奏依頼などにも積極的に派遣されています。電気系統を一切使用せず、全て持ち運びのできる楽器で演奏するスタイルはジャズの中でも類を見ず、明るく愉快なトラディショナルジャズの雰囲気と相まって各地で好評をいただいています。お祭りの中でのパレードや結婚式などの華やかなシーンでの演奏だけではなく、糸魚川大火や東日本大震災の被災地でのボランティア演奏などもブラスバンドが担当しています。

 

 拙い文章ではあったと思いますが、この文章がいわゆる「ジャズバンド」として想像するものとは少し違う「ブラスバンド」の演奏を楽しむ助けになれば幸いです。読んでいただきありがとうございました。

 本日のリサイタルでは2つの異なる分野を研究するブラスバンドが登場します。それぞれのブラスバンドの違いにも着目してお楽しみください。

Treme Brass Band 『I've Got a Big Fat Woman』より

Grazing In the Grass

南アフリカのトランペット奏者ヒュー・マセケラの曲をブラスバンドでカバーしています。

ニューオルリンズスタイルのブラスバンドでは、ジャズの範疇を飛び出し、HIP HOPやレゲエ、ファンクなど様々なジャンルを取り入れた音楽を演奏します。

ニューオリでブラバンをやれば、ジャズ以外の音楽ジャンルにも詳しくなれるかもしれません。

結局ニューオルリンズジャズと言っても様々な形があるため、

この文章を読んでも益々「ニューオルリンズジャズとは?」となってしまうかも知れませんが、

私が個人的に考えるニューオルリンズジャズの共通点は演奏したり聴いたりすると元気になれるところだと思います。

「楽しく音楽がやりたい」​と思っている人は是非一度このサークルに入ってみてください​。

今年度は4月頭の新歓もなくなり、どんなサークルなのか知ることが難しい状況ですが、

質問や要望などありましたらTwitter(@nojc_shinkan20)DM、またはニューオリのLINE@(下のQRコードをスキャン)にお願いします。

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